「面白い」とは

 おととい、演劇を観てきた。

 ここ10~15年の演劇業界を引っ張ってきたカンパニーだという評価をあちこちで見聞きしてたのでかなり期待して観に行ったのだが、僕はあまり面白いと感じることはできなかった。「技術的に上手い」っぽい、とか「構造や手法が洗練されてる」っぽい、とかは感じたけど、それらを通じて表現されていることには面白さを感じることができなかった。

 劇でも小説でも映画でも、自分が面白いと思うものには何があるのかと考えると、たぶん、未知のものを突き付けられているという感覚だと思う。おととい観た劇にも僕にとっての未知のものは描かれていたかもしれないけど、少なくとも僕が感じ取れた範囲の中には無かった。

 ただ、未知のものがあればなんでも面白いと思うかというとそうでもない。自分の世界に無かったものが目の前にあったとしても、「こりゃー俺の人生とは関係ねえな」というくらいに遠く感じてしまったら面白くない。自分が普段から考えてること、感じてることと地続きの領域にあるものとして未知のものが提示された時に面白いと感じるんだと思う。ベン図で言うと、自分が普段から考え感じている領域Aと、作品世界B、が部分的に重なり合っている感じ。共通部分(つまり自分にとって既知のもの)を経由して、領域Aの外まで作品の力で連れて行ってもらう。そんなイメージ。

 そうだ、そうやっていろんな作品の力を借りて自分の世界と感性を拡張していこう。